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「―ロシウ」 名前を呼ばれて、もう一度顔を上げた瞬間、いたずらっぽく笑っているシモンの顔が近づいてくる。 手首をつかまれて、思わず体が固くなった。 「……ん…」 シモンが小さい音を立てて、つかんだ手首を舌で舐め上げる。 「…え、っ…!」 突然の行為に、ロシウは顔を赤くしながらそっぽを向く。 「いきなり何を……!」 「嫌?」 シモンにこんな風に見上げられると、どうしたらいいか分からなくなってしまう。 「……嫌ではない、けど…今はしなきゃならないこともあるし」 ロシウは眼差しを落とし、彼の目を見ないようにして答える。 「夏休みにも会えなかったんじゃないか。仕事、そんなに忙しい?」 「……ええ、ちょっと」 確かに、二人はかなり久しぶりに会ったのである。 普通、恋人と2ヶ月も会えなかったと言ったら、周りの人々に聞かれるだろう。 ―本当に付き合っているのか?と。 だが、そんなの聞かれたくないとシモンは思った。なぜなら、自分も気になって仕方がないからだ。むしろ今まで、ロシウにそれを聞いてみなかったのか不思議なくらいに。
二人が付き合い始めた頃―1年前ごろ―にはこうではなくて、ほとんど毎日顔を合せていたのだ。まあ、二人とも同じ大学で、同じ街に住んでいたから当然というところだろう。 そして、幸せだったあの日々が終わったのは今年の3月。ロシウが大学を卒業して、本人の希望どおり教師として働き始め、彼の職場である学校近くに引っ越してからだ。 で、本来ならシモンも一緒に卒業して、その近くにある適当な会社でも就職したりして、このままずっと一緒に……なんて思ったりしたのだ。 ……単位がたりなくて留年、ということを知る前までは。 ああ、終わった。あなたっていう人は。だから真面目にしてと言ったんじゃないですか。ロシウにきっとそう言われるのだろう。そして、 「あなたっていう人は……!だから真面目にしてと言ったんじゃないですか」 ……やっぱり、想像した通りだった。 それでも、なんとか別れずに今までそこそこうまくやってきたと思っていた。 だが、初めては遠くから遊びにきたりしたシモンも新しいバイトを始め、ロシウも予定よりも仕事が忙しいこともあり、ますます会う機会も少なくなってきて、気付いてみたらいつのまにか夏になっていたのである。
「寒い……」 彼彼が小さくつぶやく声が聞こえた。慌てて首を回すが、ロシウの背中に顔を埋めている少年の表情は見えない。 感じられるのは、ただ自分の背に触れてくる冷たい肌だけ。 「……温かめてくれ…」 彼を鎮めるため、なだめるように言う。 「ええ、ちょっと待ってください。すぐお風呂が用意できるから」 だが彼は、自分から離さず、むしろもっと強く抱きしめてくる。 「……お湯じゃなくて、体で…」 彼が言ったことの意味が分からなくてまごついていると、冷たい手が足の間に滑り込んでくる。 ただ軽く触られただけなのに、教室であったことを新たに思い出して、ロシウは顔を赤らめる。止めるひまもなく彼の手がジッパーを下げて、ロシウのものを露出させる。そしてあっという間に、唇を開けて。 「な、なにを……!」 ロシウのものを、口内に含む。ロシウはそれに抵抗もできず、ただ唇を噛んで耐えているだけ。 「ぁ、ぅ……ッ」 生まれ初めて人の内部に入られて、背中がしびれるような感覚を味わう。 柔らかくて、潤っていて、そしてちょっと熱くて。入れているだけで、気持ちが良くなる未知の感触。 ちょっとざらついた舌が、最も太い部分を這わせる。 「は……ぁ…っ、うッ…!」 足腰はすでに力を失い、湯船のへりに腰をかけるようにして、シモンの舌の愛撫を受ける。 彼もこんなことをした経験はなさそうで、ただ僕のものを口に入れたまま、舌であちこちを舐めているだけなのに、それだけなのに物凄く気持ち良くて… 「っ……どうして……っ…そん、な……ぁっ」 ただそれだけを繰り返す。訳がわからない。止めなければ、彼を温かめてあげなければ、そう思っているのに、なぜ自分は漏れそうになる声を堪えながら彼の舌に籠絡されているのか。 彼が少し要領をつかめたように頭を前後に動かすと、ぴちゃぴちゃ、と淫猥な音が立つ。 その濡れている音に、本物の性行為にも似た感覚に限界が近くなっていく。 「……っ…シモン君、もう…っ…ぬ、抜いて……!」 ただ、彼の口の中に放つことだけはいけないと思って、今にも達しそうなのを堪えながら必死に訴える。
[シモンさんとシモンくんと僕] 本文見本
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